孤独だった少年・桐山零の成長物語としての魅力!
零の精神的成長に関わる人物たち
プロ棋士としての戦い、そして川本家の人々との絆。この2つが両輪となって、『3月のライオン』は展開していきます。そして、それは同時に主人公・零の成長物語でもあります。
プロ将棋の苛烈な世界に身を置いていても、彼の内面は、思春期のもろい男の子。しかも、「自分には将棋しかない」「自分のせいで家族が不幸になった」という思いを抱えています。
川本家3姉妹や、二海堂といったライバル棋士、島田をはじめとする先輩棋士との交流を通して、少しずつ精神的に変わっていきますが、決してそれは簡単なことではありません。
そして、零が成長していく上で、欠かせない人物が他にも登場します。
林田高志(はやしだ たかし)
★「3月のライオン」1巻に掲載
零が通う高校の教師。将棋が趣味だったため、転校してきた零のことをすでにプロ棋士だと知っていた。零のことを気にかけ、学校でのよりどころとなる。
零は孤独になりがちな性質から、学校生活もあまり上手く送れませんが、それを助けるのが林田先生の存在。プロ棋士としての零を尊敬しつつも、ひとりの教師として零の等身大の悩みに向き合います。
家族とも距離をとり棋士たちとの戦いに明け暮れる自分を、はじめて「ただの悩める高校生」として扱ってくれる存在が現れたことで、零は少しずつ変わっていきます。
幸田香子(こうだ きょうこ)
★「3月のライオン」2巻に掲載
家族を失くした零をひきとったプロ棋士・幸田柾近(こうだ まさちか)の娘。幼い零が家に来てから、姉弟のように一緒に成長するが、零が自分以上に将棋の才能を発揮したため挫折。それ以来、零をあからさまに嫌悪した態度をとるようになる。
川本3姉妹や二海堂、林田先生たちを零にとっての「光」とするなら、香子の存在は「影」。
香子は零を憎みながらも、辛いことがあると零を頼り、本音を吐露します。香子の中に割り切れない零への愛憎がみてとれますが、それは零にとっても同じこと。光となる人物たちに囲まれて成長していく零の中で、香子の存在だけがずっと心に影を作り続けます。
棋士としても成長し、同時に普通の高校生としても徐々に大人になっていく零ですが、いつかどこかで香子とは絶対に向き合わなければなりません。今後描かれるであろう、その場面に期待が高まります。
まとめ
『3月のライオン』の魅力について、「将棋」「家族」「成長」という3つの視点から考察しました。個性豊かなキャラクターたちが織り成す、まるで組曲のような壮大な物語です。
キャラクターやストーリーの魅力を中心に紹介しましたが、他にも、羽海野チカ先生の柔らかい絵柄や、時々入るほっこりするギャグ展開など、まだまだ語るべき要素はたくさんあります!
そうした魅力は、ぜひマンガ本編を隅々まで読んでお確かめください。
もちろん、今話題になっているアニメ版や実写映画版から入ってもオーケー! どこを入り口にしてもハマれることは保証します。
零の成長、川本家の温かな食卓、プロ棋士たちの魂をかけた戦い……、そうした『3月のライオン』の魅力を思う存分味わってくださいね!