こうの史代原作によるアニメ映画「この世界の片隅に」のリバイバル上映を記念した舞台挨拶が、本日8月2日に東京・テアトル新宿で開催され、すずの声を演じたのん、片渕須直監督が登壇した。
終戦から80年を迎え、主人公のすずが100歳を迎える今年。2016年に公開された映画「この世界の片隅に」は、去る8月1日より全国で再上映が行われている。リバイバル上映にあたり、のんは「再び劇場で観られる機会に恵まれたことをとってもうれしく思っています」とコメント。来場者に年齢を問ったところ、20代の手が多く挙がったことを受けて、片渕監督は「(2016年の)最初の公開から9年が経っているので、未成年だった方もいるわけで。そういう方が新しく映画館に来てくださるのが本当にありがたい」と感慨深げに語った。
改めてのんは「私の中でも『この世界の片隅に』はすごく特別な作品。私の役者人生の中で欠かせない作品になっている」と話し、「こうやってたくさんの人に見続けていただける作品だということが、心からうれしい」と微笑んだ。また片渕監督は「すずさんは、戦争が終わる歳に20歳になる。そんな年齢だった方が100歳を迎えられるということは、戦争中に大人だった方、戦争中に生きていた方のお話を聞ける機会が少なくなってきたことを感じざるを得ない。その話を聞ける時代が遠くに去ってしまいそうだけど、そうならないように、なんとか繋ぎ止めようと思って描いた映画です」と作品に込めた思いを口にする。そして「映画の中で、できるだけ現実を描こうと思っていた。映画の中で生きているすずさんは実在している人ではないけれど、そのすずさんをのんちゃんが演じてくれたことで、いつまでもみんなが覚えてくれる人としてすずさんが存在できていて、それは意義があることだと感じています」と続けた。
のんも「戦時下の出来事を体験した方のお話を聞く機会が少なくなってきている中で、『こういう生活があったのかもしれない』『こういう自体が起きたときにすずさんたちはこういうふうに生きていたのかもしれない』と思いを巡らせていくと、自分が生きているこの土地でこんな生活があったんだなと、想像することができる。そうすると、自分の生活の中にある幸せを感じることができると思う。そんな幸せを尊く思えるような、そんな作品になっていたらいいなと思います」と観客へ語りかけた。
舞台挨拶中には司会から“すずさん”に向けて質問が投げかけられ、のんがすずとして答える場面も。片渕監督は「すずさんはあの日々からずっと生きているんだということが、のんちゃんが今ちょっとしたすずさんの声を出してくれたことで、改めて納得できた気がするんです」と語り、「そう、すずさんはまだ生きています。今も生きていて、どこかで元気にしていると思います。すずさんは、ずっとずっと元気で、今も生きています」としみじみと言葉にした。
(c) 2019こうの史代・コアミックス / 「この世界の片隅に」製作委員会
(コミックナタリー)