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サンデー文化祭で「名探偵コナン」青山剛昌の貴重な資料とトーク、島本和彦らも登壇

2025/10/15 18:15

小学館の週刊少年サンデー編集部主催によるイベント「サンデー文化祭2025」が、去る10月12日と13日に東京・神保町で開催された。コミックナタリーでは連載作家陣によるトークショーも実施された10月13日の様子をレポートする。

お宝品やマル秘情報、作者が選ぶ名シーンを展示

今年の「サンデー文化祭」は小学館ビル、一橋講堂、出版クラブホールなど神保町内の複数会場で展開。小学館ビルではサンデーの年表や各作家が大切にしている“お宝品”、ここでしか知ることのできない情報が記された「サンデーのマル秘展」などのコーナーが用意された。フォトスポットとして設置された「編集長机」に大嶋編集長が現れると、豪華景品が当たる“ガラポンタイム”がゲリラで開催され、来場者は長蛇の列を作り催しを楽しんだ。

そのほかにも連載作家陣によるライブドローイングも実施。出版クラブホールには、作者自らが選んだ名シーンをコメントとともに掲載する展示スペースも設けられた。加えてコラボカフェやスタンプラリー、「職業体験」をテーマとした描き下ろしイラストのグッズの販売などが行われ、幅広い年代の来場者が各企画を満喫している様子だった。

「尾守つみきと奇日常。」「写らナイんです」「廻天のアルバス」の制作秘話

一橋講堂では連載作家陣によるトークショーを3回にわたり開催。「サンデー新鋭連載陣!SPステージ」には「尾守つみきと奇日常。」の森下みゆ、「写らナイんです」のコノシマルカ、「廻天のアルバス」の原作者である牧彰久が登壇し、トークを繰り広げた。

作品について「尾守つみきと奇日常。」の森下は「『つみきさんがかわいい』と思ってもらえるように、自分の理想とギャップを大事にしながら描いている。友孝は“視点キャラ”。友孝くん視点で読んでいたときに、つみきさんがかわいく見えるように意識しています」と説明。青春とホラー要素を交えた「写らナイんです」について、コノシマは「オカルトが好きだったので、担当さんに『オカルト研究部の話が描きたい』と言ったら、『何かひとつオリジナリティがあったほうがいい。“熱血オカルト部”にするとか。全国大会を目指したらどうか?』という話になり、そこからお互いヒートアップしていって“スポーツマンガ”みたいにしたほうがいいという話になって、『写らナイんです』が生まれた」と振り返る。森下が「(文化部なのに)スポーツマンガ……?」と不思議そうに尋ねると、コノシマは「スポーツマンガを軸に考えて描いていったんです」と明かした。

「廻天のアルバス」の原作を務める牧は「最初は軽く読めるコメディを描こうという話だった。ファンタジーを絡めて“ファンタジーあるある”を無双していくのは、コメディとして面白いんじゃないかと。なぜ無双できるかといったら、ループしているから。なぜループするのかというと……ちょうどそのときリアルタイムアタックのゲーム動画をよく観ていたのもあって、ループしているのもスピードを競っているから、という思考の流れがあり、ループしながらリアルタイムアタックしている勇者が生まれました」と解説。「今考えると、アルバスのキャラクターも、リアルタイムアタックをしているゲームの実況者さんに影響されているのかもしれません。『スピードを競う』というストイックさがありながら、お茶目な感じもあって。そういうところに面白さを感じて、(キャラクターにも)反映されている気がします」と語った。

「面白い」とコメントしてもらえるのがエネルギーになる

「連載をしていてうれしかったことは?」というトークテーマに対して、コノシマは「全部。全部が輝かしい毎日」と発言し、牧も同意しながら「(連載を)続けられていること」と続ける。森下も頷きながら「こういうイベントに参加させてもらえるのもありがたい。読者さんとお会いできる機会もあまりない。見るとしたらネットの反応なので」と回答。「サンデーうぇぶりの作品ページのコメントは読みますか?」という質問には、3人とも“読む派”であることを告白する。森下は「笑っちゃったのが、言葉にならない言葉が書き込まれているというか。『尊い』って思ってもらえた気持ちが、文字になっていない(笑)。サーッて消えていくような顔文字があったりすると、楽しんでもらえているんだなというのを実感できてうれしいです」と微笑んだ。

一方でコノシマはホラーマンガを描いているが故か、「うれしいんですけど、たまにオカルト系の怖いコメントが来るんです」と話す。「『こういう怖いマンガを描いていたら危ないから、神社にお祓いに行ったほうがいい』とか、『霊に憑かれると体の左半身が痛くなる』と書いてあって、怖いなと(笑)。でも読んでいて面白かったです」と作品ならではの読者コメントに触れた。「前提として、どんなコメントがあってもいいと思う」と前置きした牧は「ただ……褒められてえ(笑)」と正直な思いを吐露。「やっぱり、『面白い』って書いてもらえるのが一番エネルギーになります」と思いを口にした。

関係性、テンション、ときめき……それぞれが聞きたいことを質問

トークショーの後半では、お互いへの質問が飛び交う。森下から牧には「アルバスからフィオナに対する“想い”の描き方を“恋愛”というくくりにしていないのは、何か狙いがあるのか?」という質問が投げかけられ、牧は「なぜアルバスがフィオナを助けたいのかと考えたときに、もちろん恋愛という感情を乗せるというのは選択肢としてありました。でも“恋愛”っていう感情が物語に与える影響がものすごく大きいと思って、その話にしかならない気がしたんです。なのであえて避けたところはある。今度どうなるかはわからないんですが、今は“みんなを救いたい”という勇者らしさが出ていいのかなと思っています」と答えた。

牧からコノシマへの「言葉選びのセンスがずば抜けていますが、どんなテンションで描いているんですか?」という問いに、コノシマは「ギャグが激しいときは、激しい音楽を聴いて、アップテンポでいこう!という感じでやっていて。音楽を聴かないと描けないかも」と返答する。森下からも「たくさんある小ネタは、思いつくままに入れていってる感じなんですか?」と聞かれたコノシマは「“めくり”を意識していて。次のページで面白くなるために、それまでにギャグを詰め込んで、次で『驚き』、また『ギャグ』、そして『ホラー』みたいな感じで。ページの“めくり”を考えている」と制作での意図を説明した。

コノシマから森下には「“ときめく”を描くにあたり最も注意していることは?」という質問が飛ぶ。森下も「ページをめくって、つみきさん(のときめきシーンが)ドンっと来るように意識している」と、コノシマと同様に“ページのめくり”を意識していることを明かす。また「友孝くん目線で読んでくれている人が、つみきさんと目が合うという疑似体験ができるように、友孝くんのドキッとした感情が読んでくれた方にも届くように、というのは気をつけて描いています」とコメント。しかし「落ち着いて見返したときに『えー? めっちゃ青春してるやん』って、もう戻ってこない青春を思って悲しくなる(笑)」と付け加え、3人で笑いあった。またイベントの最後には、3人の直筆イラストが描かれた色紙が、じゃんけんで勝ち残った来場者にプレゼントされた。

“滾る炎”の島本和彦が登場

次に行われたのは、サンデー編集部によるPodcast番組「少年サンデーのフキダシ」の公開収録。「少年サンデーのフキダシ」は雑誌の66周年企画として、少年サンデー編集部がマンガについての話を語っていく番組で、今回は「滾る炎のSP公開収録!」と題し、今年5月より「ヴァンパイドル滾」をサンデーで連載中の島本和彦と、島本の担当編集者である石井氏、関氏がゲストとして登壇した。

少年サンデー編集部員でありパーソナリティの大塚氏が「ヴァンパイドル滾」について、「最近のお話も『これはどういう展開で、どういうことなんだろう?』と、説明はされないけど笑ってしまうところが“島本節”を感じる」と話すと、島本は「単におちゃらけたファンタジーではなくて、ちょっとした社会風刺を扱いつつ、でも暗くなってしまってはいけないので、ポップな感じで社会問題を扱えないかと思いながら挑戦している内容になってます。ギャグを読んでいるつもりで、『すげえ深く切り込んでるけど、大丈夫、この人!?』となっていけばいいかなとも思っています」と語った。

「島本先生から持ち込みの電話です」「どういうこと?」

島本が少年サンデー編集部に持ち込みの電話をしたところから始まった「ヴァンパイドル滾」。持ち込みをしたことについて、島本は「サンデーでいつかもう一回連載をやりたいと常々思っていたんですけど、『島本和彦なんていらない』と言われたら傷つくから、傷つかないように、新人の状態からいけば途中までは付き合ってくれるんじゃないかと思ってやってみた」と振り返る。大塚氏が当時のサンデー編集部で「島本先生から持ち込みの電話です」「どういうこと?」「どういうこと?っていうか、そういうことです」というやり取りがあったことに触れながら、島本はなぜ持ち込みに至ったのか、という経緯を説明していく。

その後も公開収録内では、島本から「藤田和日郎のアシスタントが続々とデビューをして連載を取っているから、『藤田和日郎のアシスタントが連載1作目に持ってくるようなマンガを描こう』という当初の目的があった」といった、自他ともにライバルと認める藤田和日郎の話題が飛び出す。またヴァンパイアに興味がなかった島本が、なぜヴァンパイアを題材にマンガを描こうと思ったか、その真実も明かされる。さらに藤田との同時連載が決定した経緯や「頭にきたから描いた」という第1話についても“島本節”全開で語っていく。

連載決定に向けて、ネームが通るまでの振り返りトークが繰り広げられていく中、ふと「長い時間話したけど、何分経ったの?」と気付いた島本に、大塚氏からは「まだ(トークの中で)連載が始まってないんですけど、プレゼントコーナーがあるので……」と、トークコーナーのタイムリミットが告げられ、島本は「ああもう終わりだー!!」と絶叫。島本がイラストを執筆したプレゼントコーナーを終えると、大塚氏は「楽しい時間はあっという間でして……」と締めの挨拶に入り、島本は「終わったの!? まだ連載始まってないのに!?」と改めて確認する。「もっと作画のときの苦労みたいなお話を聞けるかと思ったのですが……」と残念そうな大塚氏に「聞いてー!!」と訴えた。なお公開収録の様子は、10月22日と29日にPodcastで配信予定となっている。詳しいトークの内容は配信をチェックしよう。

歴代担当編集者から青山剛昌への質問

連載作家陣のトークショーとして最後に登壇したのは「名探偵コナン」の青山剛昌。最初のコーナーでは、歴代担当編集から青山への質問が読み上げられる。「打ち合わせの場で米津玄師さんの『Lemon』が流れたとき、『これを聴いていると警察学校組を思い出す』と仰ってましたが、ほかにもこの曲を聴いたらこのキャラを思い出すというのはありますか?」という質問に、青山は「阿笠博士の初恋のエピソードを描いていたときは『大きな古時計』がテーマソングだなと思いながら聴いていました」と回答。また「THE COLLECTORSの『愛ある世界』を『コナン』の連載前に聴いて、『これだな! やっぱりラブコメだね』と思って、俺の中ではテーマソングになってますね」と語る。また「ラブコメを描くときには大瀧詠一さんの『君は天然色』が頭の中に流れてますね。あとは『古畑(任三郎)』の曲とか、『アンナチュラル』のサントラの『カタルシス』という曲も好き」と述べていった。

青山剛昌の最近のお気に入りキャラクターは?

「最近カッコいい、かわいいと思ったキャラクターは?」という質問には「『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』の主人公が、笑っちゃうくらいカッコよかった。あとは最近『スーパーマン』の新しい映画を観たんですけど、それに出てくる犬のクリプトがかわいい。スーパーマンのお腹にクリプトが乗っていたときに『かわいいー』と思った」と、にこにこと微笑む。編集者から見ても、最近のアニメやドラマをたくさん視聴しているという青山。アニメやドラマは原稿の下書きをしているときに観ていることが多いと言い、「最近は『着せ恋』(『その着せ替え人形は恋をする』)の海夢ちゃん、『小市民シリーズ』の小佐内ゆきちゃんもかわいいですね。『瑠璃の宝石』も面白い。凪先生がかわいい」とお気に入りのキャラクターを挙げていく。

続けて「少年サンデー作品でお気に入りのキャラクターは?」という質問が投げかけられると「最近では『葬送のフリーレン』のフリーレン。アニメの第2期ももうすぐ始まりますけど、全部観てますよ。『フリーレン』はセリフがカッコいい。あとは『百瀬アキラの初恋破綻中。』のアキラちゃんがかわいいですね」と答えた。

あだち充、高橋留美子から色紙をもらった際の裏話

「サンデー文化祭」にまつわるトークコーナーでは、会場内でも展示されていた連載開始前に描かれたコナンの初期設定画、第1話のロゴ、単行本の表紙のデザインについて、青山自らの口から語られていく。青山の“お宝品”として展示されていたあだち充からの色紙に関して、青山は「あだち先生にはマンガ家になったときにぜひ色紙をもらいたいと思って、小学館のパーティでお会いしたときに『大ファンなので、サインをいただけませんか?』と言ったら、あだち先生は『あん?』と。『おめえさんは俺の商売敵だからやらないよ』と断られてしまったんです(笑)。それからだいぶ経って、あだち先生の息子さんが『YAIBA』と『コナン』ファンだからサインをもらえませんか?と、編集部を通して連絡が来たので、『じゃあ!(交換しましょう)』という提案をしたんです(笑)」と説明。展示コーナーには1998年にもらった前述のあだちからの色紙に加え、2019年にもらったという高橋留美子からの色紙も並んでいた。青山は「留美子先生とは前から仲が良かったんですけど、色紙がほしいと言い出すきっかけがなくて。そんなとき、風の噂で留美子先生が灰原哀が好きだと聞いたので『じゃあ、灰原描きますから!』と提案をして……(笑)」と、あだち同様に自身が執筆したものと交換する形で色紙を手にしたエピソードを披露した。

ネームに悩む青山剛昌に、島本和彦「俺は敵だぞ?」

またトークの流れで、以前の小学館ビルに併設されていたカフェの話になると、青山は「打ち合わせとかでも使っていました。『4番サード』を描いている頃に、全然ネームが通らなくて。たまたま島本和彦先生とそのカフェで会ったときに、『こんな話を考えてるんですよ』と言ったら『俺は敵だぞ? そんなことを話していいのか?』と言われました(笑)」と、島本らしいリアクションが返ってきたエピソードも明かした。

そのほかにもイベント中には諸伏景光、萩原千速のキャラクターデザイン時のラフも公開され、客席からは悲鳴が上がる。貴重な資料の公開と制作の裏話に、観客は興奮する気持ちを抑えながら耳を傾けていた。

後半はトークショー恒例となったプレゼントコーナーを実施。青山直筆のサイン色紙、そしてイラストが執筆されたTシャツが、じゃんけんで勝ち残った2人に進呈された。また最後にはステージ上で青山がライブドローイングを披露。観客は青山が千速、コナンを描いていく姿を目に焼き付けるように見つめていた。

(コミックナタリー)
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