一時期話題になった「涙活」(るいかつ)という言葉をご存知でしょうか? 意識的に泣くことでストレス解消やリラックス効果を図る活動を意味する言葉のようです。
普段「萌え」や「エロさ」で私たちBLファンを癒してくれているBL作品。もしや、「泣けるBL」を読めば癒されるだけでなく、ストレス解消にもなるのでは!?と、とんでもない名案(?)を思いついてしまいました。
そんな訳で今回は、スタッ腐が厳選した「泣けるBL」8作品を紹介していきます。
ひとえに泣ける、といってもジャンルは色々ありますが、今回はダークなものではなく「優しい涙」を流せるような作品を選びました。
疲れてしまったとき、嫌なことがあったとき、もちろん元気なときでも…この「泣けるBL」ラインナップから気になる作品を見つけて、心のリフレッシュに活用していただけると嬉しいです!
少年たちにはどうにもできない運命がある
泣けるBLとして有名な作品。未読の方はこの機会に読んでみてはいかがでしょうか。
本作の舞台は大正時代。今よりさらに同性愛には理解がなかったであろう時代に惹かれ合った二人の男子学生の物語です。
学生時代って過ぎてみれば一瞬ですが思い返してみると、人生で一番不安定なころだったように思います。心身ともに大人に近づいているとはいえ、世間からするとまだまだ年齢的には子ども。時代に、運命に翻弄されることしかできない立場です。本作のキャラクターたちは若さゆえに、倒産や自然災害、結婚など、自分一人ではどうにもできない状況に置かれていきます。どれだけ一緒にいたいと願っても周りがそれを許さない。そんな中でも一途に、長い間ずっと一人の相手を思い続ける彼らの姿に目頭が熱くなる名作です。
また、時代物の醍醐味である和装が美しく描かれている点も注目ポイントの一つ。和服フェチにはたまらない、素朴だけど色っぽい和服姿のカットがたくさん拝めますよ!
「玉響」の語源は、勾玉が触れ合った時に鳴るかすかな音のことが転じて「わずかな一瞬」という意味になったそうです。彼らの過ごした美しく儚い瞬間にぜひ、触れてみてください。
アンドロイドと人間の悲しくも優しい恋
こちらも泣けるBLとして支持され続ける名作。
主人公・寅雄と、亡くなった彼の恋人をモデルに作られたアンドロイド・ヒカルBの切なくも暖かい恋を描いた本作。世界観がきちんと説明されているので、SFに馴染みがなくてもすぐに物語に入り込めると思います。山中ヒコ先生の柔らかいイラストも相まって人間とロボット、それぞれのひたむきな愛に終始心を打たれます。どの台詞、場面に感動した、というより二人の過ごした永い時間のすべてが悲しくて愛おしくなる唯一無二の作品です。
ヒカルBはアンドロイドだけれど、ふとした瞬間に人間より人間らしい表情を見せる瞬間があります。何度も読み返していくうちに、ヒカルBの人間らしさを感じるシーンが増えていき、初めて読んだ時よりも深い切なさを重ねて感じるようになる…そんな不思議な魅力が本作にはあります。
未読の方はなるべくレビューを読むなどせず、予備知識なしで読み始めるとより感動が深まると思います。ぜひ読んで頂きたい名作です。ぜひ!
人生で一番多感な時期に揺れ動く、男子学生たちの心
4つの物語が収録されている、小松先生のデビューコミックスです。今回はその中の短編2作品を紹介させていただきます。
まず表題作「それから、君を考える」
ずっと片思いしていた相手・タカシが大学受験に合格したら東京に行ってしまう。本当は行って欲しくないけれど、タカシが弱っている時には勇気づけ、精一杯背中を押すヤス。彼の健気な愛がただただ切ないです。また、好きな相手に「ここ(田舎)には何もないから東京にいきたい」と言われたときの気持ちを考えると、こちらまで胸が張り裂けそうになります。
何気ない言葉で傷ついたであろうヤスと、傷つけてしまったことを随分後になってから知るタカシ。タイトルだけでも十分“エモい”ですが、内容はもっともっとエモーショナルな作品です。
そして個人的に一番涙した「夜明け前が一番暗い」
父親の不倫がきっかけで両親が離婚することになり傷心中の要と、彼にひそかに想いを寄せる大輔の一瞬の逃避行のお話です。
この作品はとにかく読んでいただきたい! 美しい絵柄もさることながら、キャラクターたちを通して読者の心の柔らかい部分を救ってくれる力がある作品。小松先生の文学的な言葉一つ一つが胸に刺さります。
切ないBLを読みたい方、「涙活」したい方にぜひ読んでいただきたい1冊です。
優しい世界観に自然とほほを伝わる春の涙
『海辺のエトランゼ』の続編。本作からでも楽しめますが、前作を読むとなお感動が増すと思います。
紀伊カンナ先生が描く、柔らかく優しいキャラクターたちや書き込まれた海や街並みが美しい。もっと大きいサイズで読んでみたい! と毎回思う作品です。
前作では実央の視点で物語が進んでいきましたが、今回は駿が主体のお話。女性との婚約を破棄し、男が好きだと両親に伝え実家を出てから、はじめての帰省。しかも恋人である実央を連れてのことです。周囲の視線や自分がしたことに対する罪悪感、そして両親に受け入れてもらえるのか…。かわいらしい絵柄でほのぼのした作風ですが、男同士で生きていくと決めた時にぶつかる様々な壁が現実的に描かれています。同性を好きになっただけで、なぜこんなにも辛い思いをしなくてはいけないのか…。駿の気持ちを考えると胸がしめつけられます。
また、両親を早くに失った実央が駿一家と接していくことで、はじめて「家族」を知っていくという点にも感動しました。
二人でだからこそ、過去の辛い経験を乗り越えていくことができる。お互いの足りない部分を補い合い徐々に前に進んでいく彼らの物語に、きっと気持ちの良い涙が流れるはずです!
一歩一歩近づいてゆく、男子高校生の恋心
男子高校生たちの切なくも甘酸っぱい恋模様に胸キュン涙がとまらない1冊。表紙に描かれた爽やかな澄んだ瞳と「窓を使って行き来する関係」という言葉にピンと来たかたにぜひ読んでいただきたい作品です。
いとこだし、幼なじみだし、男同士だし。好きだけどどうしていいか分からない。母親に疑われないためにも試しに女の子とも付き合ってみたけどやっぱり違う。若さゆえに自分でのベッドで寝ている相手を見ながら自慰行為に耽ってしまったことに自己嫌悪することも…。そんな主人公・愁人の同性を好きになったことに戸惑う感情が丁寧に描かれています。
好きになった相手が同性というだけでこんなにも悩みが尽きないものなのか、と胸が痛くなりました。
両片思いの二人をずっと近くで見てきた、ひとりの女性
その斬新な切り口に発売当時、BLファンの間で話題となった作品。あらすじを読んで「女性キャラクターが登場する作品は苦手だからやめとこ! 」と思った方もいらっしゃることでしょう。ですが、そんな方にもぜひ一度読んで頂きたい名作です。
正直私もBLは男性しかでてきて欲しくないタイプの腐女子ですが、本作に関してだけは女性キャラクターにかなり好感を持てました。好感どころか最終的には「ありがとう、がんばったね…! 」と抱きしめてあげたいくらい大好きになっていました(笑)
登場キャラクター全員が自分の気持ちより大切な相手の気持ちを尊重にした結果、こんなにも悲しい展開が待っているなんて…と、あまりの切なさに涙があふれてくるはず。
しかし読了後は「美しい物語を読んだ…」と不思議なくらい、爽やかで前向きな気持ちにさせてくれる作品でもあります。
女性キャラ地雷! な方や、普段BL作品は読まない方にもおすすめしたい1冊です。
大きくなって帰ってきたワンコ攻めの無垢な心にうるうる
小さい頃お世話になったひとのもとにまっすぐ帰る一途さはまさにワンコ! ワンコ攻め(特に大型犬)好きの方必読の1冊です♡ 世界にはまだこんなにもまっすぐな愛があるのかと、あまりの純真さにあなたもきっと涙するはず!
澄晴のアメリカ帰り感満載のストレートな愛情表現に戸惑う辰巳のかわいらしさも注目ポイント。ずっと面倒を見ていた鍵っ子小学生が突然イケメン大学生になって帰ってくるだけでも驚くのに、熱っぽい視線まで送られては最初の頃は慣れるだけで精一杯ですよね…!
徐々に一緒の暮らしが自然なものになり、幼いころの姿だけでなく成長した大人の男としてさらに澄晴を好きになっていく辰巳。どれだけ長いブランクがあろうと惹かれ合う者同士の絆は切れないことを再認識した作品でした。
澄晴にとっては、子どものころお世話になった綺麗で優しいお兄さんと。辰巳にとっては、絶対に結ばれないだろうと思っていた相手と。ずっと想い続けていた相手と愛し合える奇跡、喜びをぜひ本作で味わってみてください♪
「魂を愛してほしい…」ミステリアスな純愛の先に
人によってかなり感想が異なる作品かもしれません。個人的には今年読んだ作品の中で一番涙したのが本作です。ミステリアスな展開で、上巻では本当に魂が入れ替わったのか、それともただ嘘をついてからかっているだけなのか分からず、終始ハラハラドキドキ…。下巻では張られた伏線がすべて回収され、そこで明かされた真実のあまりの切なさに衝撃を受け、この作品に出会えてよかった…! と震えました。
自分が愛している人がもし事故に遭い、他者と人格が入れ替わってしまったと告げられたら果たして信じられるのか、今までと違う外見を愛せるのか。どちらも「信じる! 愛せる!」と即答できる方は少ないはず。
本作はもちろんBLらしい萌え要素もたくさんある作品ですが、愛について深く考えさせられる1冊でした。
<あらすじ> |
ここまで8作品の「泣けるBL」を紹介しました。読んでみたい1冊には出会えましたか? 萌えやエロだけでなく、人生について考えさせられる作品があるのもBLの魅力のひとつ。ぜひ、この機会に「泣けるBL」を読んで心のデトックスをしてみてはいかがでしょうか♪