2016年から『グランドジャンプPREMIUM』にて連載され、現在は『グランドジャンプむちゃ』に移籍して連載されている、雨瀬シオリ先生による漫画が原作。2021年にはテレビドラマ化されました。
舞台はとある高校。「倫理は学ばずとも、将来困ることはほぼ無い学問」と、新年度の一回目の授業から言い切る倫理教師・高柳。そんな彼に生徒たちは、圧倒されたり、憧れのまなざしを向けたり、嫌悪感を示す者も……。本作は高柳と、彼の授業を受ける生徒たちの関わりを、倫理を通して真摯に描いています。
様々な悩み事を抱える高校生たちを、突き放すことなく、寄り添いすぎることもない距離感で、彼らと向き合う高柳。影が濃く、どこか艶めかしくもある唯一無二の絵柄で描かれる原作は、引用される哲学者たちの言葉もあいまって、人生にとって大事なことに気づかせてくれるような傑作です。
ひずき優先生によるノベライズ版は、原作漫画から珠玉の8エピソードを小説化。原作の描写を更に丁寧に描き、より心情がわかりやすくなっていて、原作を読んだ方でもきっと楽しめる作品となっています。
読み終わる頃には、あなたもきっと高柳先生の授業を受けたくなるはず。
原作は『漫画アクション』で2007年から連載されたこうの史代先生による漫画作品。劇場アニメ化、二度のテレビドラマ化もされており、劇場アニメの関連書籍として蒔田陽平先生によるノベライズ版が出版されました。こうの先生の出世作『夕凪の街 桜の国』と同じく、「戦争と広島」を描く作品です。
太平洋戦争中の1943年、主人公・すずは結婚を機に広島市から軍港の街・呉へと移り住みます。戦時下で徐々に厳しくなっていく暮らしを、ユーモアと知恵で乗り切っていくすず。嫁ぎ先の家族や近所の人たちとも少しずつ打ち解けてゆきますが、1945年、戦況は劣勢となり、頻繁に空襲を受けるようになって……。
こうの史代先生特有の柔らかく暖かいタッチで、戦時中の人々の生活をユーモラスに淡々と描く本作。初めからずっと死と隣り合わせのような緊迫感溢れる戦争モノではなく、一人の女性の人生の一部がたまたま戦争の時代と重なっていた……という描き方がなされているのが印象的です。戦禍であっても日々の暮らしを知恵と工夫で生き抜き、夫を愛し、好きな絵を描く主人公・すず。明るくのほほんとした彼女ですが、激しさを増す戦況によって過酷な運命に巻き込まれていってしまいます。辛く悲しい物語ではありますが、それだけでは終わらない、人間の強さや美しさを感じられる一作となっています。
ノベライズ版は漫画版、劇場アニメ版を補完するような内容で、細部の描写やキャラクターたちの心理などが丁寧に掘り下げられ、物語をより立体的に楽しめます。漫画や劇場アニメで物足りないと感じたなら、是非とも読んでいただきたい作品。ふりがな付きの双葉社ジュニア文庫版も出版されており、小中学生の方にもオススメです!
荒木飛呂彦先生による『ジョジョの奇妙な冒険』Part4『ダイヤモンドは砕けない』に登場する人気漫画家・岸辺露伴を中心とした短編漫画シリーズ。ノベライズ作品は、この短編漫画シリーズを原作とした複数の著者による短編小説集で、漫画とはまた違った様々なエピソードを楽しむことができます。一部エピソードはテレビドラマ化もされており、2023年5月には実写映画も公開予定です。
人気漫画家・岸辺露伴には、対象を本にして記憶を読んだり命令したりできる「ヘブンズ・ドアー」という名のスタンド(超能力)があります。好奇心旺盛で、作品のリアリティを何よりも重視する露伴。彼の不可思議な体験談や、取材先での奇妙なトラブルをスタンドで切り抜けるエピソードなどを描く短編集です。
『ジョジョ』本編のようなスタンド同士のバトルアクション要素は少なく、人間の業やホラー的な怪現象などを1話完結で楽しめる本作。『ジョジョ』のスピンオフではありつつも、この作品のみでも楽しめる仕様となっています。アート作品のような大胆で美しい作画を楽しめる原作と、原作の雰囲気を全く損なわず、新たな魅力を生み出しているノベライズ版。癖のある登場人物たちと圧倒的な世界観で描かれる濃密なエピソードの数々は、ひとたび読めば虜になってしまうこと必至です。
直木賞作家・三浦しをん先生による純度100%の傑作青春小説が原作。2007年に海野そら太先生によって、『週刊ヤングジャンプ』及び『月刊ヤングジャンプ』にてコミカライズされました。ラジオドラマ化、舞台化、実写映画化、アニメ化もされており、大筋は同じでありながらも、それぞれ少しずつ異なるアプローチで描かれています。
かつて強豪校で活躍していたランナー・ハイジと、天才ランナーでありながらも暴力事件によって部活動を辞めたカケル。ハイジは偶然見かけたカケルの走りに魅了され、「走るの好きか」と問いかけます。問いかけに足を止めたカケルは、ハイジに古い学生寮・竹青荘に連れ帰られ、そこに住む個性豊かな住人達と共に箱根駅伝を目指すことに。素人でありながら、練習を重ねる内に少しずつ力をつけていく竹青荘の住人達でしたが……。
三浦しをん先生による原作は、著者特有の個性的なキャラクター描写と展開の面白さが光る名作青春小説。メインキャラクターであるハイジとカケルだけでなく、気が付けば登場人物全員に愛着が湧いてしまうはず。ほとんど未経験でバックグラウンドも走る理由も全く異なる大学生たちが、箱根駅伝という一つの大きな目標に向かって成長していく様に、心が熱くならずにはいられません。「走る」ことの表現や読後の爽快感も素晴らしく、陸上競技や駅伝に興味がなくても感動間違いなしです。
海野そら太先生によるコミカライズでは、より深いキャラクターの掘り下げなどオリジナル要素もあり、原作とはまた違った魅力を楽しむことができます。漫画ならではの疾走感溢れる競技シーンにも是非ご注目。
「駅伝なんて興味ない」という方にも、長年の箱根駅伝ファンの方にも、自信を持ってオススメできる一作です。
ノーベル文学賞受賞者であるスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ氏のデビュー作。1985年に出版された、第二次世界大戦の独ソ戦に従軍した女性たち500人以上への聞き取りをまとめたノンフィクションです。舞台化・映画化(原案として)もされており、日本では小梅けいと先生が作画、速水螺旋人先生が監修を担当してコミカライズされています。
戦争という大きな争い中で、集団として扱われがちな兵士たち。ですが、一人一人にそれぞれの命があり、人生があり、感情があります。百人百様の戦争体験が、武勲を誇るでもなく、美談にするでもなく、淡々と語られる本作。冷静に、けれど確かな情熱と勇気と執念を持った著者だからこそまとめることのできた、ルポルタージュの大作です。
コミカライズ版は小梅けいと先生による温かみのある絵柄で、重い話が続く内容を少し緩和してくれるかのよう。原作に素晴らしい解釈を加え、情感をもって細やかに描かれていています。速水螺旋人先生による監修もあり、軍服の描き分けなど細かな描写も丁寧で、当時の歴史や文化をも知る一助となるかもしれません。
今現在も世界のどこかで起きている戦争。読めばきっと、この無関心ではいられない話題について、思慮を巡らすきっかけを作ってくれるはず。
原作は、澤村御影先生による推理小説シリーズ。コミカライズ版は相尾灯自先生が手掛けており、2022年7月時点でシリーズ累計部数70万部を突破した人気作です。2021年には2シーズンに渡ってテレビドラマ化もされました。
子どもの頃のとある出来事をきっかけに人の嘘を見抜く能力を持ってしまい、それゆえに周囲と距離を置いて孤独に過ごしている青年・深町尚哉と、一度見たことは決して忘れない絶対記憶能力を持つ民俗学専門の大学准教授・高槻彰良。大学の民俗学の講義での出会いを機に、二人は怪異にまつわる事件に巻き込まれることになり……。
少し残念なイケメン准教授と、常識のある男子大学生の凸凹コンビが、民俗学の知識で様々な怪現象を「解釈」していくミステリシリーズ。都市伝説や怪奇事件など、二人のもとに持ち込まれる事件は一見奇妙なものですが、「推察」によって判明した真相には人間の業が垣間見えて非常に興味深いです。
民俗学というと一見取っ付きにくく感じられるかもしれませんが、本作はそんな気持ちを軽く吹き飛ばしてくれます。柔らかく軽快な文章で非常に読みやすくストーリーに引き込まれる原作小説と、原作の雰囲気を崩さず、美しい絵柄でキャラクターの魅力がより感じられるコミカライズ版。少しでもご興味が湧いたなら、ぜひ気になるほうからお手に取ってみてください!
原作は1984年に発表された田辺聖子先生による短編小説。2003年に実写映画化、2020年には劇場アニメ化されました。コミカライズ版は劇場アニメ版に準じたストーリーで、キャラクター原案を手掛けた絵本奈央先生によって描かれています。原作・実写映画版とはまた違う、大胆なアレンジが見どころです。
大阪弁の軽快なセリフのやりとりで、退廃的な印象さえ感じるほのかにエロティックな関係性と、刹那的なようで永遠にも思える美しい恋を描いた原作。何度も読み返したくなる名作短編ですが、コミカライズ版では基本的な設定や印象的なセリフ・モチーフはそのままに、明るく爽やかで、読み終わった後に前向きな気持ちになれるような、感動的なラブストーリーとなっています。
足が不自由ながら、悲観することなく、逞しく好奇心旺盛なジョゼ。海や魚が好きで、夢に向かって努力する恒夫。二人が少しずつお互いの世界を広げていく様子に、思わず涙してしまうかも。絵本先生の美しい作画も世界観にぴったりで、白黒なのに色が見えてきそうです。
原作や映画版と合わせて、ぜひ「ジョゼ虎」の世界に浸ってみてください!