名作漫画の共通点は連載当初の熱量を保ったまま、最終回まで駆け抜けていること。その作品だけが持つ世界にどっぷり浸れるのが漫画を読む醍醐味です。誰もが知っている人気作でも、実は読んだことがなかったり、最終回まで読み切っていなかったりすることも多いのではないでしょうか?今回紹介する漫画はどれも、最後まで読み応えのある傑作ばかり。評価が高く映像化されている作品が多いのも特徴です。まだアニメでは完結していない場合、一足早く結末を知ることもできます。シーモアで、在庫切れを気にせず一気に最終巻まで楽しんでください。
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【あらすじ】主人公長部静一は平凡な中学2年生ですが、息子を溺愛しすぎる母親に手を焼いています。夏休み、親戚と一緒に登った地元の小山で、母は崖から落ちそうになった従兄弟のしげるをそのまま突き落としてしまいます。母の犯行を目の当たりにしながら、静一は誰にも打ち明けることができません。やがて、静一は母の異様な本性に気づいて怯えるように……。
【作品情報】作者は『おかえりアリス』『惡の華』『漂流ネットカフェ』の押見修造。本作は2017年から2023年まで小学館『ビッグコミックスペリオール』で連載され、全17巻で完結しています。母親の裏の顔を見てしまった少年の物語です。
【おすすめするポイント】サディスティックな異性に翻弄される気弱な少年を描くと天下一品、サイコサスペンスの巨匠押見修造。今回は異性が実の母親となり、恐怖も倍増。母の異常性がどんどん明らかになっていくうちに、今度は静一にも異変が……。母と息子の因縁を巡る物語の結末に戦慄が走ります。登場人物の心理状態によって、繊細に変化するペンタッチも見事です。後半の衝撃の展開からも目を背けないでください。
【あらすじ】主人公・ウシジマくんこと丑嶋馨は10日で5割という高い金利で金を融資する闇金「カウカウファイナンス」を経営しています。訪れる客はギャンブル依存、買い物依存など、一時の快楽のために借金を重ねて、まともな金融からは相手にされない負債者ばかり。ウシジマくんは最初は気軽に金を貸しておいて、徐々に相手を借金地獄に陥れていきます。しかし、ウシジマくん自身も資金を借りている身の上だったのです。
【作品情報】作者は現在小学館『ビッグコミックスピリッツ』で2020年から『九条の大罪』を手がける真鍋昌平。終始一貫社会の罠にはまり追い詰められた人間を描いています。2004年から『ビッグコミックスピリッツ』で始まった本作は2019年に連載終了し、全46巻で完結しています。2010年から放送されたテレビドラマはシーズン3まで放送され。劇場版は4作公開されました。ドキュメンタリータッチの闇金漫画です。
【おすすめするポイント】自ら街の雑踏の中に入って街の人の声を聞くという作者の圧倒的な取材力によって、借金地獄に陥る人の様を、時に残酷に時にブラックユーモアを交えて描いていきます。どのような状況と心理で人は多額の負債を抱え込むのか?「奴隷くん」と呼ばれる多重債務者を反面教師として、借金の罠にはまらないための勉強にもなります。現実社会にある落とし穴こそが真実のホラーだと教えてくれる作品です。
【あらすじ】江戸時代の三代将軍徳川家光時代、若い男性だけがかかる原因不明の感染病「赤面疱瘡」が発生し、男子の数が極端に少なくなってしまいます。そこから将軍を女性が担当するようになり、大奥は将軍の相手をする男子ばかりが暮らす、女人禁制の場所となります。貧乏旗本の水野祐之進は、寺社奉行の娘との縁談を断って大奥に入り、一生ここで過ごす覚悟を決めます。そんな折、七代将軍家継が逝去し、八代将軍の座を巡って江戸は大騒ぎになります。
【作品情報】作者は『西洋骨董洋菓子店』『きのう何食べた?』『フラワー・オブ・ライフ』のよしながふみ。本作は白泉社『MELODY』で2004年から2021年まで連載され、全19巻で完結しました。2010年と2012年に実写映画が2作公開され、2012年にはテレビドラマ化。2023年にスタートした再ドラマ化では最終エピソードまで制作されました。また、2023年にはアニメ化されNetflixで配信されています。
【おすすめするポイント】「もしも大奥にいるのが男性ばかりだったら」という架空のファンタジー時代漫画。将軍の座を射止めたら、大奥のイケメン男子に囲まれる逆ハーレム状態になります。現状と逆転した女性優位の世界で、男社会の鬱憤を晴らしてください。歴史上では暗君と呼ばれた将軍も女性に転換するとなぜか素敵。八代将軍から十五代将軍まで、それぞれにドラマチックな恋愛が展開していきます。全巻読み終えると江戸中期から幕末までを勉強できます。
【あらすじ】小学校5年生のプンプンは転校生の田中愛子と親しくなり、将来の夢を語り合います。しかし、翌朝には母が父のDVを受けていることが発覚。母は入院し、プンプンは叔父雄一に育てられることに。成長していくうちにプンプンは夢を打ち砕かれる容赦ない現実を体験していきます。高校卒業後、一度は漫画家を目指すものの挫折。プンプンは久しぶりに愛子と再会しますが、それが二人の運命を大きく狂わすことになっていきます。
【作品情報】作者は『ソラニン』『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』『虹ヶ原ホログラフ』の浅野いにお。2007年から小学館『週刊ヤングサンデー』、2008年から2013年まで『ビッグコミックスピリッツ』に連載され全13巻で完結しています。第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門の審査委員会推薦作品に選出されました。ごく普通の男の子プンプンの成長物語です。
【おすすめするポイント】リアルなペンタッチで知られる作者ですが、本作は主人公プンプンとその家族だけはヒヨコの落書きのような姿で終始描かれます。他の人物や背景が細かく描かれている効果で、逆にプンプンや家族が漫画的な世界から浮き出て、現実の存在かのような印象を与えています。ドラマチックな展開になりそうな場合でも、結局は現実的な苦い結末に……。もしかしたらプンプンは作者の投影ではないかと思わせる希代の問題作です。
【あらすじ】C教の信仰を中心にする15世紀ヨーロッパのP国では、地動説を唱える者は火あぶりになるほど迫害されていました。主人公ラファウは、神童と呼ばれる秀才。天動説に疑問を持ちながらも、世渡りのために神学を学ぶつもりでいました。ところが地動説を唱え入牢していたフベルトとの出会いから次第に天文学に興味を持ち、禁断の学説・地動説に傾いていきます。異端審問官ノヴァクはラファウに異端の疑いを抱きます。
【作品情報】作者は『ひゃくえむ。』の魚豊で、2023年から『マンガワン』と『裏サンデー』で『ようこそ!FACT(東京S区第二支部)へ』を連載中です。本作は2020年から小学館『ビッグコミックスピリッツ』で連載され全8巻で完結し、テレビアニメの制作も決定しています。人間の知を巡る物語です。
【おすすめするポイント】たとえ迫害されても自分の信念を貫けるか?現代人は当たり前のように科学の恩恵を受けていますが、それは多くの異端とされた人たちが迫害にめげずに道を切り開いたおかげです。地動説に目覚めた人たちはたとえ処刑される運命にあっても、揺るがない信念を持っています。死んだ人たちの思いは次の世代へ――生きる勇気を与えてくれる一作です。
【あらすじ】高校教師・原美鈴は黒髪で眼鏡をかけた地味なイメージの女性。友人・美奈子の婚約者早藤は美鈴との情事を撮影し、それをネタに脅された美鈴はずるずると早藤との関係を続けていました。人目をはばからず美鈴への恋心をストレートにぶつけてくる教え子の新妻祐希に触発されて、美鈴は早藤との関係を断ち切ります。しかし、今度は教え子との禁断の恋愛が噂になり、学校にいられなくなってしまいます。
【作品情報】作者は『おんなのいえ』『サターンリターン』『おはようおかえり』の鳥飼茜。本作は2013年から2017年まで講談社『モーニング・ツー』で連載され、全8巻で完結しています。フリースタイル『このマンガを読め!2015』で第8位を獲得した、性的被害に悩む女性の物語です。
【おすすめするポイント】現代の視点から見ると早藤の行いは犯罪で、美鈴は明らかな被害者ですが、性的暴行を受けて簡単に訴えることができない人の心理を丁寧に描いています。 美鈴が世の中の理不尽を受け入れながらも強く生きていこうと変化する姿に共感できます。婚約者に愛されて結婚勝ち組を誇る美奈子。美奈子に隠れて女性をコントロールする早藤。かわい子ぶりながら裏では闇を抱えているミサカナなど、癖の強いキャラクターが印象的です。
【あらすじ】エリート銀行員鈴木は中学時代の同窓会で、かつて自分がいじめていた相沢優一と20年ぶりに再会します。相沢は鈴木から凄絶ないじめを受けており、途中から不登校になっていました。鈴木の「いじめられる方にも原因がある」という言葉を聞いて相沢は行動を開始。実は相沢は鈴木の娘・詩織の担任教師でした。詩織は学校で何者かから嫌がらせを受けていますが、相沢はそれを静観。校長は「うちの学校にはいじめはない」ということなかれ主義を押し通しています。
【作品情報】原作は『妖怪の賃貸事情』『第三次性徴期、大塚くん!』の君塚力。作画は『黒の探偵』『仕立屋工房ArtelierCollection』の日丘円。二人のコンビ作には『僕の名前は「少年A」』『見て見ぬふりは、罪ですか?』があります。本作はスクウェア・エニックス『ガンガンONLINE』にて2020年から2022年まで連載され、全6巻で完結しています。中学時代にいじめられていた教師がいじめた相手に報復する復讐劇です。
【おすすめするポイント】いじめた側といじめられた側、全てのいじめ当事者に読んでもらいたい問題作。いじめに関する相沢の言葉は全てのいじめ被害者の気持ちを代弁しています。自分をいじめた鈴木の娘・詩織のいじめを静観している相沢の真意はどこにあるのか?全ては物語が展開するうちに明らかになっていきます。ずる賢く、社会の甘い汁を吸い弱者いじめをしていた鈴木が転落していく様は痛快です。
【あらすじ】主人公の小学生・石田将也は聴覚障害のある転校生・西宮硝子にイラついていじめを繰り返します。担任教師が黙認し、クラス全員が硝子いじめに加担するようになった後、今度は将也がいじめの首謀者として糾弾され、一転いじめられる側になります。そんな中でも将也を守ろうとしてくれたのはただ一人硝子だけでした。しかし、まもなく硝子は転校し、将也は孤立したまま高校3年生になっていました。将也は硝子と再会を果たします。
【作品情報】作者は『マルドゥック・スクランブル』『不滅のあなたへ』の大今良時です。2013年から2014年に講談社『週刊少年マガジン』で連載され、全7巻で完結しています。第19回手塚治虫文化賞新生賞を受賞し、2016年には劇場版アニメが公開されました。
【おすすめするポイント】幼い頃、本当は好きな子なのに、いや好きだからこそからかったり意地悪したりしてしまった記憶は誰にでもあるのではないでしょうか?素直になれない心のすれ違いが将也と硝子を通して描かれ、人と分かり合うことの難しさとふれあうことの尊さを同時に教えてくれる作品です。リアルな二人の心の揺れ動きに共感必至。またクラスのいじめのメカニズムや心理が克明に描かれていて、いじめの実態を知る参考書にもなります。
【あらすじ】主人公のアッシュ・リンクスはニューヨークのストリートキッズを取り仕切っています。ある日アッシュは銃で撃たれた男から「バナナ・フィッシュ」という言葉とロケットペンダントを託され、ロサンジェルスの住所を告げられます。「バナナ・フィッシュ」はベトナム戦争中に錯乱して銃を乱射し同僚を殺害したアッシュの兄が残した言葉でした。やがて、ストリートキッズの取材に来たカメラマン助手・奥村英二と共に「バナナ・フィッシュ」の謎とそれを巡る陰謀に巻き込まれていきます。
【作品情報】作者は『吉祥天女』『櫻の園』『YASHA-夜叉-』『海街diary』の吉田秋生。本作は1985年から1994年にかけて小学館『別冊少女コミック』で連載され、全19巻で完結しています。2018年にはテレビアニメ化され、2005年から5度にわたって舞台化されました。禁止薬物を巡る戦いに巻き込まれた2人の青年のクライムアクションです。
【おすすめするポイント】当時のニューヨークの風景をリアルに再現。当時の少女漫画の型を破った作品で、連載終了後30年経った今も輝き続ける傑作です。謎の言葉から、やがて禁止薬物を売買する犯罪組織の実態とその戦いを描きます。一方、国籍も素性も違うアッシュと英二が深い絆で結ばれていく友情物語としても読めます。また、現代になってようやく取り上げられるようになった男性の性被害の問題をいち早く取り上げており、先見性に驚かされるでしょう。
【あらすじ】主人公・宮本明は想像力豊かで幼馴染みの坂下ユキとの妄想に悩まされています。そこに突然美女・青山冷が現れ、その色気に逆らえず親しくなってしまう明。なぜか冷は明の兄・篤の免許証を持っており、「篤を救出するために一緒に村に来てほしい」と誘います。明は友人の斉藤ケンと共に篤のいる彼岸島に渡ります。そこで待っていたのは吸血鬼と化した村人たちでした。
【作品情報】作者は『サオリ』『クーデタークラブ』の松本光司。本作は2002年から2010年まで講談社『週刊ヤングマガジン』に連載され、全33巻で完結しています。本作の続編である『彼岸島 最後の47日間』は2010年から2014年まで『週刊ヤングマガジン』に連載され全16巻で完結。『彼岸島 48日後…』は2014年から連載され42巻(2023年12月27日時点)まで刊行されています。2010年に実写映画化、2013年にはテレビドラマ化され、2016年にはドラマの続編が映画化されています。
【おすすめするポイント】当初は幼馴染みのユキに愛の告白もできず、妄想だけが豊富な気の弱い青年だった明が、彼岸島のバトルを通してたくましい戦士として成長していきます。襲ってくるモンスターは吸血鬼だけでなく、人の血を吸えない場合は邪鬼や亡者になる、変異種や混血種が存在するなどバリエーションも豊富。また人間側も邪鬼を操ることができる「邪鬼使い」の設定などがあり、ゲーム化されたのも納得できるほど世界観に広がりがあります。
はずれなし!漫画の楽しみを味わえる完結漫画を楽しもう
今回は一気読みできる完結漫画95作を紹介しました。 隙間時間の楽しみや、予定のない連休に読んでみてはいかがでしょうか。 一つの作品を最後まで読んだら、作者の他の作品を読んでみるのもおすすめです。 シーモアなら作者の別の作品も多数取り揃えているので、読み逃しがありません。 作者の世界観を知ることで、さらに奥深く漫画の世界に踏み込んでいけます。 漫画にはまだまだ知らない読むべき名作、傑作がいっぱい。これを機会に新しい漫画の扉を開いてみてください。